Q&A

死刑はどういうきっかけで廃止になるの?

それぞれの国によって事情は様々だけれど、
例えばドイツでは、戦争が終わったときに死刑を廃止したし、 イギリスでは、死刑を執行した後に、実は無罪だったことが判明した裁判が廃止のきっかけになったんだ。

また、フランスは、大統領選挙の際に死刑の廃止をはっきり明言した候補が当選したことで死刑の廃止につながったし、 南アフリカは、憲法裁判所が死刑の違憲判決を出したんだよ。

それから、韓国は10年以上死刑の執行をしないことで事実上の死刑廃止国になったんだ。
なるほどね。みんな大変だったんだ。
でも、何かきっかけがないと死刑を廃止するのは難しいかな?
国によってきっかけはさまざまだけど、国際連合は死刑存置国に対し、死刑の執行を停止するように何回も求めている。
このような働きかけのなかで、どんどん死刑廃止国が増えていっているんだよ。
国際連合が死刑の執行の停止を求めているのは、すべての人の生命に対する権利を尊重しているからなんだ。

人権を保護することを目的とする国際法のことを国際人権法というんだけれど、生命に対する権利を尊重することは、国際人権法で認められているとても大切なルールなんだよ。
そうなんだ〜。
それぞれの国の動きだけじゃなくて、世界の動きも廃止の方向に向かっているのね。

おひさま弁護士のよくわかる解説

それぞれの国によって、死刑が廃止になるきっかけは様々ですが、 死刑廃止国が増えている背景には、国際連合やヨーロッパ評議会などが、 死刑存置国に対して、死刑の執行停止を呼びかけている影響が大きいと思います(参照Q&A「死刑がある国はどのくらいあるの」)。

国際連合を設立した「国連憲章」(1945年)には、国際連合の目的の一つとして人権及び基本的自由の尊重をあげています(1条3項)。

また「世界人権宣言」(1948年)は、すべて人は生命に対する権利を有すると生命権を保障しており(3条)、 「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」(1966年)の第6条では、生命に対する権利の保障を定め、 死刑制度は廃止することが望ましいと示しています。

その後「死刑廃止条約」が1989年に採択され(日本は未批准)、 1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、 さらに2007年、2008年と続けて国連総会本会議において、死刑存置国に対し死刑執行の停止を求める決議が採択されています。

国際人権法とは、耳慣れない言葉かもしれませんが、個人の人権を保護することを目的とする国際法のことで、 生命に対する権利は国際人権法の根幹をなす最も重要な規範のひとつです。
この生命に対する権利を尊重するところから、死刑の廃止・執行の停止が求められているわけです。

おひさま弁護士コラム

★コラム カリフォルニア州知事の死刑執行一時停止命令

人を意図的に殺害するのは間違いである。
私は知事として、誰の死刑執行も承認するつもりはない。
我々の死刑制度は、完全に破綻している。

精神障がい者、有色人種、高額な弁護料を払えない人びとを差別的に扱ってき
た。
治安にも、犯罪抑止にも役立っておらず、何十億ドルもの税金を無駄にしてき
た。
何よりも、死刑は、間違いがあっても取り返しがつかない。

カリフォルニア州ギャビン・ニューサム州知事
2019年3月13日、死刑執行一時停止の行政命令にあたって