Q&A

死刑がある国はどのくらいあるの?

最初にお話しておくと、
死刑がある国のことを死刑存置国、死刑を廃止している国のことを死刑廃止国と呼ぶんだ。これまで10年以上、死刑の執行をしていない国も死刑廃止国に含めるんだよ。

今から30年前は、死刑存置国と死刑廃止国では死刑存置国の方が多かったんだよ。
でも、この30年の間にその数は逆転して、現在では、死刑廃止国が3分の2で、死刑存置国は3分の1になっているよ。

なるほど。死刑を廃止している国の方が多いんですね。
どんな国が廃止しているんですか?ボクの知ってる国はありますか?
みんなの知っているイギリスやフランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、それからトルコ、フィリピン、南アフリカなどは法律上死刑を廃止した死刑廃止国だよ。

お隣の韓国やロシアは法律上は死刑を廃止していないものの、10年以上死刑の執行をしていないんだ。
じゃあ、私たちが知っているほとんどの国では、みんな死刑をやめてるのね。
うーんと。
でも、死刑のある国もあるんでしょう?どんな国があるの?
死刑がある国は、日本のほかでは、アメリカと中国、イラン、北朝鮮とかだね。
アメリカも実際に死刑を執行しているのは一部の州に限られていて、しかも死刑判決・執行数ともに減り続けているんだよ。

おひさま弁護士のよくわかる解説

30年前、1990年当時は、死刑存置国 96 か国、死刑廃止国※ 80 か国で、死刑存置国の方が多い状態でした。 ※法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む

しかし、国連などが死刑存置国に対し死刑執行停止をよびかけるなかで、死刑廃止(停止)国は増え続け、 2019年現在の死刑廃止国と存置国は,死刑存置国 56 か国,死刑廃止国 142 か国となっています。
この30年間で、死刑廃止国は死刑存置国の倍以上になっており、死刑廃止(停止)が国際的な潮流となっていることは明らかです。

日本のお隣の韓国も10年以上死刑の執行をしていませんし、台湾も死刑の廃止を目指しています。★日弁連「死刑を考える」ホームページ

「世界で死刑はどうなっているのでしょうか-廃止・停止が世界の潮流」

日本弁護士連合会:死刑廃止を考える[Q7] (nichibenren.or.jp)

おひさま弁護士コラム

★コラム サン・クエンティン刑務所における絞首刑

クリントン・T・ダフィ氏は、1940年アメリカ、カリフォルニア州サン・クエンティン刑務所所長となり、1951年に退所するまでに、90人の死刑確定者の処刑に立ち会いました(「死刑囚 88人の男と2人の女の最後に立ち会って」柴野方彦訳。サンケイ出版)。

「ガラガラ蛇ジェームズは絞首台で死ぬことになり、私がそれを統括しなければならなくなった。彼の処刑の日の1942年5月1日が近づくや、私は、あらゆる恐ろしい可能性を心中にまざまざと描き出した。サン・クエンティンは、ここ4年近くの間、絞首刑はやらなかった。いまではガス室での死刑方法を使っている死刑執行人が、絞首台の扱い方を忘れているとしたらどうなるだろう?使用するロープの正確な長さを見積もるのは微妙な仕事で、熟練した手と目が要求される。もし、絞首刑執行人がヘマをやって、死刑囚の頭が切り取られたり、首が脱臼しなかったりしたらどうなるだろうか?」(10頁、11頁)
「私たちは、13階段を昇り、ハネ板や機械装置や処刑室を点検した。この部屋の中には長テーブルがあり、それに向かって3人の役人が座り、目の前の3本の紐をナイフで切るのだ。2本は偽の紐であり、3本目の紐がハネ板をはねるのだ。」(11頁)
「すべてが終わったあとで、私は、一生のうちで最もけがらわしい罪を犯したような気持ちで、事務所へ戻った。死刑執行書類に署名してから、知事室へ必要事項を報告した。それから、絞首刑の話しをするなど思ってもいやだったが、とにかく、報道記者たちに会う決心をした。」(14頁)
「『この死刑に関するあなたの感想を発表してください』1人の記者が聞いた。
『わたしは、カリフォルニア中の人が、みな処刑の光景を見たらよかったと思う。リゼンバーの顔から、ロープのために肉がもぎ取られ、半ばちぎれた首や、飛び出した眼や、垂れ下がった舌を、みんなが見たらよかったと思う。宙ぶらりんに揺れ動く彼の脚を見たり、彼の小便や脱糞や、汗や固まった血の臭いを、みんなが嗅いだらよかったと思う』
だれかがあえぎ、1人の記者がつぶやいた。

『所長、そんなことは活字に出来ませんよ』
『出来ないのは分かっている。しかし出来たら、みんなのためになる。州民たちに、彼らの指令がいかに遂行されたか正確に知るのに役立つ。かって死刑に票を投じた陪審員全部、かって宣告を下した裁判官全部、私たち皆に、この苦しい試練を通り抜けることを余儀なくさせる法律の通過を助けた立法者全部は、今日、わたしと一緒にいるべきだった』

私は、前にいる蒼白な顔の円陣をぐるりと見回した。さらに、前へ乗り出して言った。
『諸君、これがわたしの感想だ。これはわたしの生涯で最も恐ろしい経験であったし、2度と繰り返されないようにと神に祈るだけだ。あとは何も言うことはない』」(14頁、15頁)。カリフォルニア州は、その後絞首刑をやめ、電気椅子による死刑となり、それもやめて薬物注射による死刑の執行となっていたのですが、現在は、州知事が死刑の執行を停止しています。