本当に日本には死刑は必要なの?

武富士放火事件 小林光弘氏に対する死刑の執行について

りす
各位
 
小林光弘氏に対する死刑の執行について
 
2014年8月29日
弁護士 小 川 原 優 之
 
1 小林光弘氏に死刑を言い渡した平成15年2月12日青森地方裁判所判決は、「被告人が事務室及び管理室の騒然とした状況を十分把握することができた筈である」こと(原判決31頁)を理由の1つとして、小林氏が、放火当時、武富士弘前店内に複数の人がいることを承知しており、殺意を抱いて放火に及んだと認定している。
 
2 しかし、弁護人が仙台拘置支所に照会したところ、小林氏が「高血圧およびめまい」の症状を訴えており、「伝音性難聴(聴力低下)の医師の所見がある」ことが判明した(平成26年3月7日付け回答)。
 武富士放火事件は、平成13年5月8日に発生した事件であるが、小林氏は事件の前から耳鳴りがしていたと述べており、事件当時すでに「伝音性難聴(聴力低下)」のため、武富士店内の従業員の声が聞こえず、「騒然とした状況」を把握できなかったことが一因となり、目の前にいた支店長以外の従業員が既に逃げていると思って放火に及んだ合理的な疑いがある。
 弁護人は、第3次再審請求において、この照会結果を新証拠として提出したところ、証拠の新規性は認められたものの、明白性が否定され再審請求は棄却された。
 
3 そこで弁護人は、より詳細で具体的な症状を調査するため、再度仙台拘置支所に照会したところ、仙台拘置支所からは、「平成15年4月28日」に行われた医師の診断結果であるとの回答はあったものの、医師の氏名については、「刑事施設の医師であるが、当時診察した同医師が退職しており、個人情報であるため、氏名については、回答を差し控えさせていただきます。」、難聴と診断した理由については、「同医師が退職しているため、具体的理由は不明であるが、本人からの耳鳴りの申出があった。」(平成26年8月12日付け回答)と回答を拒む内容であった。
 そこで弁護人としては、医療情報の開示を求める訴訟についても検討し、また小林氏に当時の耳鳴りについて手紙に書くように求めたところ、小林氏から平成26年8月11日付けの手紙で耳鳴りの状況について記載してきた。
 
4 弁護人としては、平成26年8月25日、第4次再審請求のための弁護人選任届けを小林氏に郵送し、9月2日に接見する予定である旨手紙で伝えておいたが、8月29日、死刑の執行がなされたものであって、小林氏の再審請求を求める権利を侵害する極めて不当な死刑の執行であると言わざるを得ない。
 
以上
 
 
昭和33年5月19日生
平成13年5月8日 青森県弘前市武富士放火事件
平成14年3月   逮捕
平成15年2月12日 青森地方裁判所 死刑判決
平成16年2月19日 仙台高等裁判所 控訴棄却
平成19年3月27日 最高裁判所   上告棄却
4月13日 確定 判決訂正申立棄却
平成20年11月18日から平成24年12月 再審請求(第1次)
平成25年2月から平成25年7月8日 再審請求(第2次)
9月10日 再審請求(第3次)
平成26年5月26日 棄却
5月29日 即時抗告
7月10日 棄却
7月11日 特別抗告
7月23日 接見
8月6日  棄却
8月11日 小林氏より手紙で再審請求の依頼
8月25日 第4次再審請求のための弁護人選任届けを郵送
9月2日  接見予定
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