本当に日本には死刑は必要なの?
死刑廃止フォーラム主催日比谷公会堂大集会における日弁連死刑執行停止実現委員会委員長アピール 弁護士小林修
2010年12月19日、死刑廃止フォーラム90主催の「地球が決めて20年 日比谷公会堂大集会」が開かれ、1800人を越える市民が参加し「死刑のない社会」の実現に向けて講演、コンサート、講談、シンポジウム、アピールなど様々な催しを行いました。
日弁連からも、死刑執行停止法制定等提言・決議実現委員会の小林修委員長が参加し、下記のアピールをしましたので、ご紹介します。
1 私は、 日弁連死刑執行停止法制定等提言・決議実現委員会の委員長をしております小林修です。
2 先月から、相次いで5件の死刑求刑事件で裁判員公判が行われるようになりました。その結果、3件の死刑判決、1件の無期判決、1件の無罪判決が出されました。
これまで死刑制度は自分には関係ないと思っていた多くの国民が、裁判員裁判で死刑か、死刑回避か、あるいは無罪かという判決を決めるという事態となり、否応なく、死刑制度を考えざるを得なくなっているのです。
今、死刑制度について国民の関心が高まっています。しかし、残念ながら、死刑を含めた刑罰の実態が国民に知らされているとは、言い難い現実があります。
3 他方で、世界を見たとき、死刑存置国は少数となり、死刑制度は大きく見直されています。そして、国際人権規約委員会は、日本政府に対して、世論調査の結果にかかわらず、死刑制度の廃止に前向きに検討すべきことを勧告しています。日弁連は、この勧告の実現に努力していますが、こうした国際的な動向も、必ずしも、国民が認識しているとは言えません。
4 日弁連は、2004年の人権擁護大会で「死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議」 を採択して、当委員会を設立しました。 以来、 それまでの死刑執行に対する抗議声明のほか、死刑執行停止法案の作成と国会議員への働きかけ、死刑執行停止に関する全国公聴会、死刑事件弁護のライブ研修、死刑事件弁護経験交流会、映画上映などによる死刑を考える日の実施、など、多くの活動をしてきました。
5 来年10月6日、香川県高松市で行われる日弁連人権擁護大会で、再び死刑問題を考えるシンポジウムを行うことが決まりました。
今回のシンポジウムは、刑罰の意義、行刑のあり方といった切り口で、死刑制度を考えてみたいと思います。
凶悪犯罪は減少しているにも拘らず、逆に增えているという誤った認識が広められ、重罰化が進行しています。死刑確定者は増え続け、無期刑では仮釈放がほとんど認められず、事実上の終身刑という実態となっています。我が国の行刑の実態が更生という理念とはかけ離れたものであることは、刑事弁護の経験からも実感させられています。
このような重罰化と行刑の実態を広く国民に訴え、凶悪犯罪とどのように向き合うべきか、死刑を必要としない社会をどうしたら作れるだろうか、を考えていきたいと思います。 その中で、 裁判員裁判と死刑の問題点も探っていき、死刑廃止が望ましいという日弁連の意見を形成して行きたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。