本当に日本には死刑は必要なの?
日本弁護士連合会の死刑執行停止を求める活動報告
日本弁護士連合会の死刑執行停止を求める活動報告
1 日弁連の基本政策
日弁連は,2008年10月31日付けの会長声明において,国際人権(自由権)規約委員会の勧告(日本は「死刑の廃止を前向きに検討し,必要に応じて,国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである。」との勧告)を受けたことから,政府に対し「勧告を誠意をもって受けとめ,その解決に向けて努力することを強く求め」,日弁連も「その実現のために全力で努力していく」ことを表明しました。また,「人権のための行動宣言2009」においても同様の課題を掲げました(日弁連基本政策集http://search.nichibenren.or.jp/ja/opinion/base_policy/index.html)。
また今年10月に高松で開催される第54回日弁連人権擁護大会において,「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言案」(仮)について議論する予定です。宣言案の要旨は、まず国に対し、
①刑罰として、不必要な拘禁を行わないための有効な施策を充実させること、
②刑罰として拘禁を行う場合には、社会への再統合を円滑に図るため有効な処遇を積極的に行うべきであること、
③有期刑受刑者に対しては、仮釈放を可能な限り積極的に実施し、無期刑受刑者に対しては、無期刑が終身刑化した現状を打開するため抜本的な制度改革を行うこと、
④矯正・保護部門と福祉部門との連携を拡大強化し、かつ、福祉の内容を充実すること、⑤死刑制度について、直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、
死刑の執行を停止すること、特に犯罪時20歳未満の少年に対する死刑の適用は、速やかに廃止することを検討すること、
⑥死刑判決の全員一致制、死刑判決に対する自動上訴制等に直ちに着手すること
を求めます。そして、日弁連は、上記の点について全力で取り組むとともに、死刑廃止についての全社会的な議論を直ちに開始することを呼びかけるものです。
2 法務大臣に対する死刑執行停止要請活動
2010年7月28日の千葉法務大臣による突然の死刑執行に対し,日弁連は同日,極めて遺憾であり死刑の執行を停止するよう求める会長声明を出しました。またその後、同年12月3日には、小川法務副大臣と面会し,仙谷法務大臣宛ての死刑執行停止要請書を提出しました。さらに2011年2月4日,日弁連会長が江田法務大臣に面談し,死刑執行停止について「法務大臣が毅然としてリーダーシップをとる」よう要請活動を行いました。
また日弁連は、全国52の弁護士会の連合会なのですが、死刑執行停止を求める会長声明は,日弁連だけでなく東京、大阪、名古屋等全国各地の弁護士会でも出されており、これまでの歴代の法務大臣による死刑の執行に対し会長声明を出した弁護士会の延べ数は,27弁護士会にのぼっています。
3 民主党への呼びかけ
民主党法務部門会議が,死刑制度に関する検討ワーキングチームを設置したことから,日弁連は,2010年8月5日,「国会の中で本格的な議論を開始し,継続するために,死刑制度調査会を衆参両院に設置し,かつ,その間の死刑の執行を停止するための具体的方策についても検討されるよう求める」旨の要請書を民主党へ提出し、その後ワーキングチームの勉強会に参加する機会を持ちました。
4 法務省「死刑の在あり方についての勉強会」への対応
法務省の「死刑の在あり方についての勉強会」ヒアリングにおいて,2010年9月9日,日弁連副会長が出席し,死刑廃止・停止の国際的潮流と国際人権法を尊重すべきこと,えん罪による誤った死刑執行の可能性を直視すべきこと,死刑廃止は世論にかかわらず検討すべきこと,死刑制度に関する情報の積極的な公開をすべきこと,裁判員制度を契機に国民的議論をすべきこと,死刑に代わる最高刑の検討をすべきこと等の意見を述べました。この意見の内容(http://www.moj.go.jp/content/000056074.pdf)と提出した資料(http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji02_00009.html)は,法務省のホームページに掲載されています。
5 死刑廃止を推進する議員連盟との意見交換
死刑廃止を推進する議員院連盟(亀井静香会長)と意見交換をし,日弁連側の死刑執行停止法案(2008年策定)について説明する機会をもちました。同議連は,2011年3月,臨時総会を開き,「重無期刑の創設及び死刑に処する裁判の評決の特例等に関する法律案」を正式に承認し,国会への提出活動を行うことを決めましたが、この法案には,日弁連の死刑執行停止法案と同様に、死刑制度調査会の設置と一定期間の死刑執行停止が盛り込まれています。
6 連続リンチ殺傷人事件最高裁判決(少年事件・死刑)に関する日弁連会長声明
死刑判決を受けた犯行当時18~19歳の被告人3人の上告に対し,最高裁判所が2011年3月10日,上告を棄却し,3人の死刑が確定したことから,同日,日弁連は,少年事件の特性に何ら考慮を払うこともなく,死刑判決を確定させることは誠に遺憾であるとの会長声明を出しました。
7 第54回人権擁護大会におけるシンポジウム開催とノルウェー調査
2011年10月開催の第54回日弁連人権擁護大会シンポジウムで「私たちは『犯罪』とどう向き合うべきか?―裁判員裁判を経験して死刑のない社会を構想する」を開催することとなり,その準備のため,全国各地でプレシンポジウムを開催しました。また同年5月22日から同月28日までノルウェーに調査団を派遣し,ニルス・クリスティ教授との面談,や刑務所などの調査研究を行いました。
8 死刑弁護プロジェクトチームの設置
2010年7月,日弁連刑事弁護センター,裁判員本部,死刑執行停止実現委員会が中心となって,「死刑事件弁護プロジェクトチーム」が設置され,その後,検討を重ねています。
9「死刑を考える日」の開催
市民に死刑の残虐性と問題点をあらためて考えてもらうため,映画等を上映して日弁連の提唱する刑執行停止法案について講演する「死刑を考える日」を全国各地で開催していますが、2010年11月6日には,東京で映画「BOX 袴田事件 命とは」を上映しました。また同年11月20日には秋田,12月11日には金沢と京都,2011年1月18日には札幌,3月12日には愛知で開催し、2008年10月の第1回開催からこれまでに全国で延べ4300人にのぼる市民・弁護士が参加しています。2011年12月9日には東京で開催する予定です。
10 ホームページの開設
市民に対し死刑に関する正確な情報をわかりやすく提供するため、日弁連のホームページに「死刑を考える」ページ(http://search.nichibenren.or.jp/ja/committee/list/shikeimondai/shikei_qa.html)を設けています。